おやしらずについて


 子供の歯といわれる乳歯、そしてオトナの歯として生えてくる永久歯。これらのほとんどは成長期までに生えてくるので、保護者の方もお子さんの口の中をみて確認することができます。
 ところが
「智歯」とよばれる歯は、20歳前後で生えてきますので、親御さんもわからない。ということで
この歯は
「おやしらず」と呼ばれます。漢字では「親不知」とも表記されます。
 そんな「おやしらず」が口の中でいろいろワルさをするので、いくつかご紹介しましょう。

1.歯ぐきがいたい、腫れる、膿がたまる
 
(1)おやしらずが完全に埋もれているケース

 
(2)おやしらずの頭が少しだけ出ているケース

 上イラストのようにおやしらずが完全に生えない(完全に埋もれる、あるいは少しだけ顔を出している)という方がけっこう見受けられます。とくに日本人はほかの民族と比較してもアゴが小さめなので、このおやしらずが完全に生えそろわないケースが多いと考えられています。
 このため、おやしらずのまわりにたまった歯垢がなかなかとりきれないため、下イラストのようにまわりで歯ぐきが腫れたりすることがあります。まわりの歯ぐきが腫れる現象は
「智歯周囲炎」といわれますが、その本質は辺縁性歯周炎(=歯周病)と同じです。
 
おやしらずのまわりでは歯ぐきが腫れやすい 

2.歯がいたい 
 
おやしらずがむし歯になると、隣の歯もむし歯になりやすい

 むし歯で歯が痛くなることもあります。手前の歯を巻き込んでしまうことも…。

3.ほっぺたがいたい
 上アゴのおやしらずでよく見受けられます。歯はしっかり生えているものの、不幸にもヘンな方向に生えてくるケース。外側(頬側)に生えるケースが多いでしょうか。歯がぶつかる頬の粘膜が痛み、炎症を起こすことになります。

4.歯のまわりで生じる現象
 智歯はお口のなかでもっとも後方に位置し、扁桃・咽頭などの組織、および口を開け閉めする筋肉(咀嚼筋)などに近接しています。そのため、智歯周囲で生じた炎症は、近接する種々の組織に波及し、さまざまな現象をまねきます。
1)あごの下が重い感じがする、痛む
 これは炎症反応により生じた老廃物が顎下および頚部リンパ節にたまることで生じます。
2)のどが痛い、つばを飲み込むたびに痛い
 炎症が扁桃および咽頭に波及したときに生じます。
3)とつぜん口があかなくなった
 これは炎症が口を開け閉めする筋肉(咀嚼筋)に波及した場合に生じます。炎症がはげしいケースでは、いくらがんばっても口が数mmしか開かない、なんてこともあります。

 1)および2)は、風邪をひいたときにも生じる現象ですが、智歯周囲炎のようなお口の炎症により生じることもあることを、みなさまには知っていただきたいと思います。
 尚、後述しておりますが、3)のケースでは専門機関へご紹介いたします。抗生剤点滴を受けていただく必要がありますが、相当はげしいケースでは数週間入院していただくことも考えられます。

5.そのほか
 3.の症状を放置したために、ほっぺたの粘膜がただれてしまうことがあります。そしてそれが悪化して「ガン」になることもあります。これを放置したがために不幸にして死に至った方も実際にいらっしゃいます。くれぐれもご注意ねがいます。



おやしらずに対する当院の処置方針


 当院ではおやしらずに対する抜歯を年間300件ペースで行っているせいか、おやしらずに関する相談がいちばん多いのではないか、と思います。「私のおやしらずは抜いたほうがよいのでしょうか?」「どうしてもおやしらずを残したい。抜歯を受けたくないが、なんとかならないものか?」などなど…。

 当院では、おやしらずだから必ず抜歯するとは決して考えておりません。ただし、たとえしっかり生えていてもむし歯や歯ぐきの炎症に陥る可能性が高いケースでは、抜歯したほうがよいと考えております。

 おやしらずの形態が個人により異なるゆえ、おやしらずに対する処置方針は患者様ごとで異なってしかるべきで、実際にお口の中をのぞいてみないことには方針が決まりません。ただ、生えているパターンによって、方針が異なるので、そのあたりをイラストで説明したいと思います。


1.おやしらずが完全に埋もれている場合

 このような歯を
「完全埋伏智歯」と呼びますが、下イラストのように完全に歯が埋もれています。

 完全に埋もれているケースでも、じつは下のイラストのように歯ぐきが腫れることがあります。

 やはり歯垢がたまると腫れてきます。こうなると、おやしらずを完全に取り除かないことには歯ぐきの炎症は解消されませんので、抜歯を受けるのが根本的な解決策となります。
 もちろん、歯ぐきがパンパンに腫れて、膿がたまっているケースでは、すぐに抜歯、というわけにはいきません。なんらかの方法で炎症を取り除く、つまり消炎処置が必要となります。

歯ぐきが腫れているときの応対
(いわゆる「消炎処置」について)

1)くすりを使う

 炎症があるときの基本でしょう。おやしらずのまわりでの細菌感染により炎症が生じていますので、抗生剤・鎮痛剤などの薬剤を数日間服用していただくことが多いです。場合によりうがい薬を合わせることもあります。後述のように膿を出してラクになることもありますが、くすりを飲むだけでも歯ぐきの腫れがなくなることも少なくありません。
2)たまっている膿を出す
 膿を出すとフシギとラクになります。状況により、この方法をとることがあります。ただし、歯ぐきが腫れているからといって、なんでもかんでも歯ぐきを切って膿を出す、というわけにはいきません。 
 歯ぐきを切開して膿を出す処置(切開排膿処置)では、タイミングがだいじです。
 切開により膿を出すのは炎症がピークを過ぎてからになります。それまでは歯ぐきを切開しても膿が出てきません(かえって歯ぐきの腫れが大きくなることもあります)。それまでは抗生剤、消炎鎮痛剤などの薬剤を服用していただき、お待ちいただくことになります。

抜歯
 完全埋伏智歯のケースでの手順は以下のとおりです。

 (尚、水平に横たわっているおやしらず
「水平埋伏智歯」でも手順は同様です)
1)消毒・麻酔 深めの麻酔をじゅうぶん施し(局所麻酔です)、まわりをきれいにする
2)切開・剥離 おやしらずの歯ぐきを切開し、歯が見えるように歯ぐきを剥離する
3)歯のまわりの骨を削る 場合によりけりです
4)歯の切断および歯冠除去 上イラストのように水平に埋もれている場合に行う。歯冠と歯根を分離したのちに、歯冠を取り出す。
5)残った歯根の除去 器具を用いて残った歯根を取り出す。場合によりさらに根を分割することも
6)術部の洗浄 歯や骨の削りカス、病巣などを掻き出す
7)縫合
 切開した歯ぐきを元に戻すように縫い合わせる

 およその所要時間は30分〜1時間程度でしょうが、歯の位置・形態により所要時間が大きく異なることも考えられます。また、あご骨の相当深い部位に埋もれているケース(骨内に完全に埋もれている場合)では、かなり時間を要します。


2.おやしらずの頭が少しだけ出ているケース

 こういうケースもけっこう見受けられます。部分的に埋もれていることから「半埋伏歯」とよばれます。歯ぐきが腫れやすく、むし歯にもなりやすい状態。予後がよくないので、抜歯が第一選択になるでしょう。もっとも、炎症がある場合は炎症をある程度取り除いてから行います。
 抜歯の手順は上記「1.おやしらずが完全に埋もれている場合」で述べた方法に準じますが、完全に埋もれているケースより切開・剥離する量が少ないので、術後の腫れは比較的少ないです。また、場合により歯を分割せずにあっさり抜けるケースもあります。

3.歯のアタマが歯ぐきから完全に出ているケース
 歯ぐきから歯が出ているからといって、なんでもかんでも残せるわけではありません。これはひじょうに重要な話ですが、生えてても歯みがきがしづらくむし歯をつくりやすい、あるいはまわりの歯ぐきが腫れやすいおやしらずならば、今後トラブルに見舞われる可能性はひじょうに高いでしょう。
 生えてても、むし歯が深いケースでは、おやしらずという後方のひじょうに歯みがきしづらい部位ゆえに生じたと考えられ、残した場合にどれだけ持つのか疑問です。一概に言えませんが、個々によりおやしらずを抜くか残すかは異なってきます。
 ただ、ひとついえるのは、お口の中をみてみないと安易に判断ができない、ということです。したがって、おやしらずが気になる方、一度当院で調べてみるとよいでしょう。

4.そのほか
 炎症が強烈に強いと考えれるケースでは、口腔外科のある専門機関へご紹介することがあります。専門機関では点滴処置などの体制が整っているので、抗生剤点滴などで強力に消炎を図る場合に便利です。
 消炎のために入院を要するケースもないとはいえません。専門機関へ紹介された場合は、向こうの担当医の指示に従い、必要な処置を受けるようにしましょう。

 また、あご骨の深くに埋もれており、抜歯処置に長時間を要するケースでは、専門機関(おもに九州大学病院)へご紹介させていただくことがございます。あしからずご了承ください。





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